1日前
花を買うのをやめた。扱いに困ると突き返されそうだったからだ。
ネクタイもハンカチもどれも喜んでもらえそうだが、自分の中でピンと来るものがなかった。
一日中、プレゼントを見て回ってめぼしい収穫がないことに鯉登は肩を落とした。すっかり日も暮れて、夜風が少し沁みる。
どのツラを下げて。本来なら、もっと。冷たい風が思考を後ろ向きにする。
『あのね、鯉登ニシパ。迷った時は、相手の喜ぶ顔を想像するといいよ。そうしたらその顔が見たくて頑張れるでしょ?』
『正攻法で行け、ということです』
『まあ、こっからどうリカバリするかが男の見せ所だと思うぜ、オレは』
鯉登は顔を上げた。本来なら、もっと、などとは情けない逃げ口上だ。もう、ここまで来てしまったのだ。反省も後悔も大いにする。だが、今ではない。
慣れ親しんだ道を歩く速度を上げる、半ば駆けているようだった。
どのツラも何もこのツラを下げて乗り込むしかない。
目的地に辿り着いた鯉登は息を整え、インターフォンを押した。
コメントを残す