それを早く先に言え(カウントダウン編) - 6/7

2日前
「鶴見課長」
「どうした、鯉登」
 鶴見は新年度の事業計画を表示したモニタから声をかけた鯉登に視線を移す。
「明日、先週の土曜日に出勤した分の代休としたいのですが」
 鯉登の申し出に鶴見はちらりと視線を走らせる。その先にいた宇佐美は面白くなさそうに口を尖らせ、尾形は目を伏せる。その反応に鶴見は満足したように頷いた。宇佐美と尾形は『鯉登が休んでも支障はない』と暗に告げている。
「調整がついているなら、問題ないぞ」
「ありがとうごさいます」
 鯉登は鶴見に頭を下げる。鶴見の言葉は実質、承認であるからだ。
 自席に戻る鯉登の背中を眺めながら、鶴見は口元に貯えた髭を指で撫でつける。思案する時の鶴見の癖だ。
 明日に何があるのか、日付を確認して鶴見は唇の端を持ち上げる。
 ――なるほど、なるほど、それは休まないとならないな。
 すべてを察した鶴見が生温かい視線を向けていたことに鯉登は気づかなかった。

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