それを早く先に言え(カウントダウン編) - 5/7

3日前
「ああ、それで鯉登ニシパ、そわそわしてたんだ」
「どこか上の空だったしな」
 事情を聞いたエノノカが納得したように声を上げると、アシリパも同感だと言うように頷いた。少女二人のリアクションに鯉登は返す言葉がない。
 鯉登と彼女たちの関係は家庭教師と生徒である。本来ならばここにチカパシも入るが、今日は谷垣の子どもたちの面倒を見る為に不在だ。
 鯉登が大学生の頃から付き合いで、今は定時退社日の水曜にアシリパ、エノノカ、チカパシのいずれかの家に集まっている。今日はエノノカの家で、リビングの窓からは庭で犬の世話をするヘンケの姿が見えた。
「あのね、鯉登ニシパ。迷った時は、相手の喜ぶ顔を想像するといいよ。そうしたらその顔が見たくて頑張れるでしょ?」
「私も杉元に新鮮な脳味噌を振る舞ってやりたいんだが、いかんせん今は難しい。あいつ、絶対喜ぶのに」
 思い思いに語る少女たちの目には想う相手がいる。彼女たちは恋をしている。そして、鯉登もそうだった。

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